出版されて3年近くが経過しますが、現時点で電子書籍に関する本ではベストです。昨今、出版界で電子書籍がブームになっています。その発端はやはりAmazonが出したKindle。そして、iPadの登場でしょう。紙なんて古い、そんな声も聞こえそうですが、ブームの中、その普及は思ったよりも進んでいないのが実情です。Amazonの印税が70%!出版社と本屋は無くなるっ!とか大げさに騒いでいた方もいると思いますが、たぶん殆ど的外れです。本書では日本の出版事情にスポットを当てて、電子書籍、そして出版界の未来を語ります。そんな内容です。

●日本で電子書籍が流行らない理由1

まず日本の出版界が疲弊している理由は電子書籍に人が流れているからではありません。勿論、スマホの普及によって「俺はパズドラで忙しいんだ」「私はモンストで忙しいのよ」といった理由もそうですが、根本的な理由は違います。皆さん、1日に何点の本が出ているのかご存知じょうか?その数なんと200点。1989年のバブル期には年間3万8000冊だったものが、2008年には7万6000冊。2009年には8万冊近い本が出版されているわけです。つまり、1冊の部数が圧倒的に低くなっている。今まで初版で1万部が普通だったものが、今では1000部刷るだけてやっと。実は、爆発的な出版にはカラクリがあって、取り次ぎに1万部を出すと、前金で代金が振り込まれます。借りに100万円としましょう。もし売れなくて返品されればその分100万円を返すわけですが、そのお金を返したくない出版社は新たに、1万部本を出すわけです。これは負の錬金術で、これが出版点数が増えた理由です。なので、アメリカと違って、電子書籍と出版不況はそれほど関係は無いと言えます。

●日本で電子書籍が流行らない理由2

「この市場(電子書籍)は紙とはまったく違う。それがわからないと大失敗する。読者そのものが違うから、売れるコンテンツも違う。もし、一般書籍や文芸ものをやるなら、それは絶対に売れないと断言できる。少なくとも、「Kindle」や「iPad」がそれこそ1000万台売れないと、そんな市場はできっこない。」

「それなら、マンガならいいの?」

「いや、それも違う。ケータイマンガは別として、PCや「Kindle」「iPad」でマンガを読むわけがない。なぜって、ケータイで売れているマンガの多くはエロ系、それもBLやTLものばかりだね。」
日本の電子書籍市場は年間で574億円。(2009年時点)で実はアメリカよりも大きい。ただ、その大半が携帯向け。PCはここ最近になって売り上げを落としている事を考えると、KindleやiPadの市場はそれほど大きくはない。

●日本で電子書籍が流行らない理由3

電子書籍=リアル本を越える最強コンテンツ。と言われているけれど、実はその実情はお寒いらしいです。例えば、100万部を突破した池上彰さんの「伝える力」そして、200万部突破の「もしドラ」。それぞれ電子書籍を出版したけれど、結果は散々だったそうです。伝える力が約2万ダウンロード。もしドラが9万ダウンロード。リアル本の10分の1以下という結果。ベストセラーでこれだから、リアル本1万部単位だと電子では、数百部売れていい方なのではないか?という著者。印税に関しては、書籍と同じ10%〜15%が相場らしいです。つまり、電子では儲からない現実があるわけですね。

●日本で電子書籍が流行らない理由4

AmazonのKindleで印税が70%という声を聞いて、多くの人は驚いたわけですが、実はそれは契約書を細かく読めば違うらしい。
よくよくアマゾンの規定を読んでみれば、「ユーザーのダウンロードの通信費用を著者が負担する(ファイル1MB当たり0.15ドル)」「電子書籍と紙の二つのバージョンがある場合は、販売価格は紙の本の80%以内とする」「販売価格は2.99〜9.99の範囲で設定する」
この条件をクリアして初めて70%の印税が入るわけです。

●日本で電子書籍が流行らない理由5

たとえば、今後の世界経済の動向を一流のアナリストや経済学者が書くとしよう。この場合、書き手にもよるが、私が想定した読者は最大で400万人である。日本の人口が1億2700万人なのに、これしかいないのだ。これは、まず一流大学卒で一流企業社員、公官庁職員、弁護士、医者などの専門職の職業人口から出した実数である。現在、東京大学の卒業生の総数は年3000〜3500人。これは京大、阪大、九大などの国立大学の卒業生、早慶ほかの六大学にMARCH、関関同立などの卒業生を加えると、年間15万〜20万人になる。この15〜20万人と、毎年、一流企業、官庁、専門職に就く人数はほぼ一致している。この構造は日本社会でずっと変わってなくて、就職氷河期なとど言われても、この層は変動することなく、階層ピラミッドの上位を形成している。

(中略)

そて、この年齢別の人口のうち20万人が、定年までの約40年間本を読むとする。すると、40歳分だから、800万人になる。しかし、経済書となれば、読者はほとんど男性だから半分の400万人。これが想定読者数だ。とすれば、1万部売るには、400人に1人に買ってもらわなければならない。

(中略)

経済書とかビジネス書というのはこういう世界だから、この類いのコンテンツを電子出版したら、400人に1人ダウンロードしてもらわなければならない。紙でも電子でも、これでは商売にならないから、本当に儲けるには、この人口以外にいる層に向けて企画を立てなければならない。その外側にいる層は、正直に言うと、リテラシーが低い。

(中略)

下に行けば行くほど人口が多くなるとともにリテラシーも低くなり、本に高度な知識、教養、知的冒険などを求めなくなる。前述した生涯読書量で言えば、一生のうち2000冊読以上読むのは上位層だけで、下はせいぜい数十〜数百冊ぐらいしか読まない。こういった人々は、はっきり言ってしまえば、貴重品とゴミの区別がつかない。

(中略)

電子書籍時代になると、この層が読者であるとともに、なんとパブリッシィングで著者にもなってしまう。

●本の感想。

まぁ今の所、紙でいいんじゃない?というのが感想です。100年後は分からないですけど、、。
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