適当に引用して、それなりの完成度として記事を書き上げるのは簡単だ。その方がかっこいい。ただ、それは本書の魅力を削いでしまうのではないかと思う。新鮮な気持ちで読んで欲しい。勿論、その動機付けとして本記事が参考になれば、書き手としてこれほど嬉しい事はない。ジブリと言えば、日本を代表するアニメスタジオだ。「トトロ」「ラピュタ」「千と千尋」。どの年代でも言葉に出すだけで「あ〜あのシーンがね!」と盛り上がる。そんなジブリの影の仕掛け人であるのが、本書の主役であるプロデューサーの鈴木敏夫という人物だ。一見すると、宮崎駿や高畑勲が全ての原動力と言えば、答えは違う。「もののけ姫」も元々は「アシタカ聶記」というタイトルだったものを、鈴木さんが予告編で「もののけ姫」と出してしまった事から始まる。

●後継者。

ジブリは宮崎駿と高畑勲のために作られた。これはよく聞く話でもあるけれど、本書を読むとそう強く感じる。宮崎吾朗や米林宏昌が後継者として挙げられるけれど、どこか宮崎駿が長編映画を引退してから、燃え尽き症候群のように、存在意義を失いつつある。勿論、後継者として両氏が名声を得る日もそう遠くない未来なのかもしれない。

●ジブリと巨匠。

ただ、本書で強く思った事は、ジブリそのものが「宮崎駿」「鈴木敏夫」にとって遊び場であったという事だろう。その昔、ジブリを立ちあげた時に鈴木さんは「株式会社の作り方」という本を読んで勉強したらしい。これはドラクエ5で言えば、父親だったパパスが死んだ時点に近い。これからは自律して生きて行くんだよ。そう告げられたようだ。最初はレベルがどんどん上がり、新しい呪文を覚える事に快感を感じていた。しかし、レベルはもはや簡単には上がらない。雑魚敵戦う事にも飽きている。そこに面白さを感じれるのか?興行収入ばかりが注目されるけれど、本当の意味でアニメとはそういうものなのだろうか?もしかすると、鈴木さん自身が熱意を失っているかもしれない。

本当の意味で楽しかった日々が本書では綴られている。しかし、後半に行くにつれ面白さ半減していく。絶えず登場する宮崎駿という人物の存在。それは、借りぐらのアリエッティで米林宏昌監督の見える位置で監視していたように。冒頭で言った「ジブリは宮崎駿と高畑勲のために作られた。」のように、既にジブリは役割を終えているのかもしれない。自分が書きたいものを書くある意味で超贅沢な環境だった。それは2人が天才だったが故の贅沢。でも、それ以降の監督には、絶えず、宮崎駿との比較。宮崎吾朗で言う父親である駿との比較が見え隠れする。

本書は確かに刺激的で面白い。鈴木敏夫という人物にこれだけ迫った本はかつてない。

ただ、どこかで昔を懐かしむ鈴木さんの姿が見え隠れしてしまう。

たぶん、今のジブリはウォルトディズニー亡き後のディズニーに似ている。
もがいてもがいて苦しむ。ある意味でジブリ初めての経験が待っているのかもしれない。

その過程がジブリが解体するのか?存続するのか?それも鈴木さんにかかっていると思う。
それも含めて引導を渡す事が鈴木さんの今後の大きな仕事なのかもしれない。

●感想。

ジブリファンには超面白い裏話も用意されている。例えば、米林宏昌が奥さんと手を繋いで歩いていたとか、借ぐらしのアリエッティを見て宮崎駿が泣いたとか。庵野秀明監督のジブリ時代の話も満載です。8時間というインタビューを元に構成された文章。これがつまらないはずが無い。ジブリファン必見です。
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