ゲーム界を代表する人は誰か?それを聞くと大抵の人は、マリオの生みの親である任天堂の「宮本茂さん」を挙げる。確かに、テレビゲームとしては天才的な能力を持っている。マリオもゼルダもピクミンも宮本さんのアイディアだ。しかし、宮本茂さんに師匠がいるとしたら?それは、任天堂の会社哲学ともなっている「枯れた技術の水平思考」つまり、新しい技術ではなく、枯れた技術を使ってアイディアで勝負するという哲学です。最新の技術をこれでもかっ!というほど盛り込むソニーのPSとは対極的な考えた方です。本書の主人公は、そんな任天堂の基礎を作った男「横井軍平」その人です。

物作りに関わる人、全ての人におすすめした本です。
とくに、今の技術崇拝の時代にとっては、この価値観考え方は刺激的です。

横井軍平その人は任天堂がまだ花札の販売を生業としていた時代に入社した。任天堂は何故、工学科出身の横井軍平さんを起用したのか?一説によると、法律の関係で電気関係の人材を置く必要だったのからというのが説らしいです。入社間もない頃は保守、そして花札の撹拌器の改良などを行っていた。そんな横井さんに転機を訪れたのが、遊びで作っていた(のちにウルトラハンドとなる)ものを作って遊んでいた事。それを目撃した、当時の任天堂の社長である山内博の目に止まった事から始まる。「ええやん」あっけない一言で商品化は進んで行った。そして、横井はのちに光線銃やラブテスター、そしてゲームボーイや超問題作である「バーチャルボーイ」の開発を行う事になる。

任天堂を世界的なゲーム会社に成長させた立役者は間違いなく横井その人であると思います。ウルトラハンドで認められ、そして次々にヒット作品を量産していく。そして、任天堂を世界に知らしめた小型ゲーム機「ゲームウォッチ」に繋がって行く。

●在庫処理から始まったマリオ。

マリオの誕生は実に偶然的だった。当時、アメリカ向けに大量のアーケードゲームを出荷した。しかし、船が着く頃にはそのゲームの人気を下火になっていた。1000台近い在庫。それを解消するため、ゲームの基盤だけを交換する事になった。ここがマリオの始まり。当初はポパイのキャラクターを使ってゲームの開発を行っていたけれど、版権的な問題で使用不可。苦肉の策として、宮本茂がマリオを生み出した。本書によれば、正確には宮本さん1人の力でなく、横井さん2人で考えたらしい。

マリオと言えば、ひげにオーバーオールという特徴があるけれど、これは当時のゲームの表現色の関係で、キャラクターを強調するための苦肉の作だった。のちに、アメリカの任天堂の社員にそっくりだった事から「マリオ」という名前が付いた逸話がある。

●ファミコンの十字キーは横井の作品だった。

ファミコン、ならず今のゲーム機は殆どは十字キーを採用している。これは横井軍平さんの作品であります。

●人生最大の失敗、ゲームボーイの液晶問題。

ゲームボーイの開発当初、液晶では大きな問題があった。それは視野角の問題だった。横井がOKを出しシャープが40億円を投資して工場を建設していた。それを見た社長の山内さんから「見えへんやん、売るのやめや」と言われた。当時、横井さんは本気で自殺も考えたほど落ち込んだらしい。人生最大の失敗と言っている。

●ゲームの画質競争で終わるゲーム。

これが本書で一番衝撃的で的を得ている発言です。
ファミコンやゲームウォッチ、ゲームボーイの世界では、一生懸命新しいゲームを考えるという姿勢があったんです。向こうが碁を考えたら、こちらは将棋だというようなね。ところがある程度まで行ったら、やることがなくなっていった。そうすると、テレビゲームは、色ほつけたら新しさが出るのではないかとという動きになった。でも、これは作る側からいったら、落ちこぼれなんですよね。アイディアをひねり出すんじゃなくて、安易な方へと流れている。そうなると、任天堂のようなゲームの本質を作る会社ではなくて、いずれ画面作り、CG作りが得意なところがのしてくるだろうと。そうしたら、任天堂の立場はなくなってしまうんですね。
横井さんが求めていたものは、子供が友達同士で集まって遊ぶ事が原点になっている。ウルトラハンドから時代を経て、時代は宮本茂さんが手動するようにコンピューターゲームの時代になった。これが横井さんには悲しかったらしい。そして、横井軍平さんは孤立と孤独を感じていたそうです。ただ、横井さんのこの指摘はまさに今のゲーム業界に対して当てはまる。アイディアではなく、CGの凄さや画面の奇麗さを競う時代の到来。それは横井さん的に言えば、つまらないのです。

●そしてWiiUは何故失敗だったのか?

確かに、ゲームパッドという機器は新しいけれど、マリオカートにしろ何にしろ、アイディアで勝負するのではなく、画面の奇麗さを重視してしまった。ゲーム数が少ない背景として、ゲームパッドを含めたゲーム開発が難しい事が挙げられる。結局、横井さんが指摘したような、つまらない時代。あっこんなゲームがあったんだという驚きは少ない。枯れた技術の水平思考。それは技術ではなく、アイディアで勝負する事にも繋がる。横井さんが指摘するように、つまらない時代の到来なのかもしれない。

横井さんは自動車事故で亡くなってしまったけれど、彼が生きていればもっと面白い世の中になっていたのかもしれない。

技術ではなく、アイディアが大切、、。
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