日本の物作りが危ない。世界一の技術を持っているのに、サムスンに負けている。これは何故か?日本人の多くが「日本は技術はあるけれど、マケーティングや販売が苦手。それさえ克服すればまたジャパン・アズ・ナンバーワンの時代が来る」と思っている。日本人はよく「iPhoneは既存の技術の寄せ合わせ」だと言う。しかし、この本ではないけれど「アップルvs.グーグル: どちらが世界を支配するのか」という本によれば、ジョブズが鼻高々にiPhoneを発表したその当日まで不具合が発生したという。アップルは確実にイノベーションを起こしたのです。著者は本書でイノベーションを「革新的で市場を変えたもの」だと言います。

「イノベーションのジレンマ」という有名な本がありますが、日本は確実にイノベーションのジレンマに陥っているのだと言います。

●DRAM敗戦。究極的な完璧主義。

日本の半導体産業が衰退した背景には面白い話があります。NECと日立の半導体部門が合併して誕生した「エルピーダ」ですが、そもそも文化に決定的な違いがあった。革新的な事を重視する人と現実性を重視する社風。2つの社風は相容れなかった。1+1=3になるばすが、2にもならなかった。その上で日本の半導体が衰退した背景には異常とも取れる国民性があったのです。突出な例が車のマイコンを作る「ルネサス」です。現在の車は昔の車と違って多くのコンピューターを搭載している。

例えば、レクサスなどでは1台あたり100個以上のマイコンが搭載されている。トヨタといった自動車メーカーにすれば、マイコンの誤作動=死に直結するため、不良率は0%を求めている。そのために入念な調査、それには1台5億円近い機器を使っておこなっている。ある意味でルネサスを筆頭に自動車メーカーの下請けという印象が強いです。ここで著者はこれは原発問題と一緒で、安全神話を作っている。マイコンが誤作動した時の事も考えなければいけないと言います。世界シェア1位でも赤字を垂れ流す理由はそこにあります。

●賢いサムスン。

その一方で躍進を続けるのが韓国のサムスン電子。勿論、日本で非難されている通りに金で日本から優秀な人材を獲得している事実はあります。ただ、戦略が日本とまったく違う。機械産業には「歩止まり」という言葉がある。例えば、0%なら全ての製品が正しく作動しない。逆に100%なら全ての製品が動作する。勿論、100%か理想なのは事実です。それを追求するのが日本。逆に、ある程度の不良は覚悟した上で安価に製造する事に追求するのが韓国のサムスンです。マケーッターと呼ばれる独自の部隊を組織し、的確に顧客の元に製品を届ける。ある会社の秘密の製品がサムスン本社にあり既に分析されていたという逸話もあるそうです。

例えば、日本は以前25年の製品保証を売りにしていた時代がありました。しかし25年前の携帯を使っている人が殆どいないように、それは過剰スペックです。ある意味で戦略のミスも日本の半導体が衰退した理由の一つでもあります。それはIT界の巨人であるインテルも同様です。アップルのチップの製造をトップが断ったという話は有名ですが、インテルはスマホ市場で殆どシェアを獲得していない。日本の半導体産業にもテレビにも共通する事ですが、確かに日本の技術は世界一であったとしても、それは金で解決できる問題。例えば、人材にしろ製造装置にしろ金で買えば良い。美味しい所はお金を持って正しい計画を持った者に移る。日本の技術が世界一なのは事実にしろ、じゃあそれで何なの?と聞かれれば、口ごもるしかない。

ドックイヤー的に激変するIT界の中で、特に日本のように大手は国が保護してくれると思っている人たちにイノベーションが起こせるとは思わない。イノベーションは技術の先にあるのではなく、ビジネスモデルの先にあるのだと思いました。何でも、どこでも作れる。別に1番である必要はない。それが現実だと思いました。
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