Google日本法人前社長の辻野さんがソニー在籍中、及びGoogleでの出来事を時系列、およびストーリー風に綴った本です。まず気になる点は「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた 」というタイトル。Googleよりソニーが凄いの?と思う方も多いと思いますが、アップルのスティーブ・ジョブズがソニーの創業者である盛田さんを尊敬していた事。ウォークマンを敬愛していた事を周知の事実。逆の言い方をすれば、今のGoogleやアップルには創業当時のソニーのようなスピットや文化があるという事。例えば、ソニーの設立趣意書にある。

「自由闊達なる理想工場の創設」

であったり、

「いたずらに規模の拡大を追わず」

といった文面。それは直接的ではないものの、Googleやアップルに影響している文化だったりします。自由で革新的な商品を生み出していたソニーが凋落の一途を辿る背
景が本書を読むと、よく分かる気がします。VAIOを開発していた頃の社風とは何かが変わっていた。今のGoogle的な空気と著者は言うけれど、「VAIOをやっていた時のITカンパニーのカルチャーは、それこそ、その後経験したグーグルのカルチャーに近いものがあった。たとえば、カンパニープレジデントだろうが誰であろうが、会議に遅れて行くと、座る席もなければ譲る者もいない。(中略)それが、大崎に行くとまったく違っていた。会議では、肩書きの上の人から序列順に座席が決められており、場合によっては自分が座るべき席に名札が用意してあったりした。」結果的にソニーを蝕んでいたものは、井深さんや盛田さんがソニー設立時に掲げた理想が、規模の拡大と共に薄れていった。それに輪をかけて、素晴らしい製品を生み出す事ではなく、お金がお金を生む事がビジネスになっていった。

その上で、ハードではなくネットで儲けるという方針を掲げた出井さんの「リ・ジェネレーション」(第二創業)「デジタルドリームキッズ」といった言葉。そして、ソニーの経営陣はいつからは投資銀行のように、自分の報酬をいかに上げるという事に注力していった。それこそ、ストリンガーが筆頭だったりする。辻野さんがGoogleの社長だった期間は3年ほどしか無いけれど、Googleには古き良きソニー的な文化が根付いている。もし今のソニーも「自由闊達なる理想の工場の創設」ではなく、いかに利益を上げるか?という点に置いているとしたら、たぶんソニーに未来は無いと思う。

ある種、ソニーを見限った辻野さんではあるけれども、グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれたまさに、そうなんでしょう。
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