はっきり言うと、出版されたのが2010年なので製品情報に関しては、殆ど陳腐化している。iPhone4といった今から考えると、懐かしい端末が登場する。本書の魅力はそこではない。最新のデータが必要であれば最新のデータを紐解けばいい。何が魅力的なのか?と言えば、アップルが展開するビジネスモデルについて、触れられる部分だ。一般的に言うと、iPhoneやiPadを売るアメリカ企業という認識だが、そのビジネスモデルは天才的と言える。



最新のiPhone5Sには、アップルが開発した「A7」というチップが入っている(本書が出版された時点ではA4チップ)。アップルが何故、自社でチップを開発したのか?その理由には、巧みな戦略が隠されていた。チップが発表された当初は、

A4は、従来のiPhoneのCPUに比べ、処理能力が大幅に強化されているに違いない。オリジナル設計というのも、iPadのような機器で求められる機能を追加するためのものだ。


という憶測が流れていたそうです。しかし、実際のA4チップは予想とは大きく違っていた。

iPadを分解したエンジニアの言葉を総合すると、A4の正体は意外なほどシンプルなものだった。ちょっとだけ処理を効率化し、小さくしたiPhone用CPUに過ぎず、CPU性能の向上は小幅なものに過ぎなかった。この、「わざわざ作ったCPUが高性能でなかったこと」こそが、iPad以降のモノ作りを考える上で、きわめて重要なポイントなのである。


決して高性能ではないチップを使うメリットは何か?言えば、勿論、iPhoneに最適化される事は挙げられる。しかし、一番重要なのはチップを高性能化しない事でチップを極めて小さくする事ができる点だ。iPhoneを分解すると、アップルのCPUが極めて小さい事が分かる。では何が良いのか?と言えば、単純にチップを小さいする事でバッテリーを多く搭載できる。単純に、iPhone3GSと初代iPadを比較すると、iPadの方が約5倍のバッテリーを搭載している。これは生産面でも魅力的で、チップが小さいほど、1枚のシリコンウェハーに多くの回路を焼き付ける事ができる。つまり、コスト削減がはかれるのだ。

その上で、アップルが巧みなのは、その低コストのチップを持って上で、生産を台湾のフォックスコンなどに委託している点だ。コストを極限まで削減している。ある関係者曰く「iPadと似たうな製品を作る事はできるが、あの価格で出す事はできない」と言っている。生産工程ではビスといったネジは殆ど使用されておらず、単純な作業で組み立てられるように設計されている(これは新入でも生産を可能にすめるため)。

アップル製品で故障が起こった場合は、修理ではなく「新品と交換」という事が多いそうだが、修理するよりも新しい物と交換した方が安いという理由もある。100万台、1000万台単位で生産する強みだ。日本製品は製品の魅力が敗北の原因のように言っているが、仕組みの段階でアップルに大きく負けている。

一部で批判のあるアップル方式だが、高い利益率の背景には、このような仕組みがあるのだろう。
日本で作って、メイドインジャパンだから売れるというのは、幻想に過ぎないのかもしれない。
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