訣別―大前研一の新・国家戦略論
大前研一
朝日新聞出版
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衆議院選が近づいてきた。今回の選挙でどこの党が政権を握るの分からない。「日本維新の会」や「みんなの党」といった第3極がどこまて議席を伸ばせるのか分からない。ただ、どの党が政権を担うにしても、湯でカエルのようにジリジリと茹でられ、気付かない間に死んでいた。では済まされない。国家の借金が1000兆円を超える大問題。政治はその危機感が無かったかのように、政局に明け暮れている。マスコミも誰と誰が組むのか?その事ばかりを注視しているように思える。しかし世界的にみれば、中国の台頭、新興国の爆発的な成長。日本の教育で生み出されるの人材は、未だに高度経済成長期に対応した従順な労働者だ。「平成維新」以来、20数年ぶりに大前研一氏が本格的な国家ビジョンを語った本書は貴重だ。付け焼刃的な消費増税。貰えるかどうか分からない年金制度。国民が無関心でいる間に国家は破綻へ着実に進んでいる。

読者の中には「また大前か」と思う方もいるでしょう。基本的に本書で語られている事の多くは20数年前に出版された「平成維新」の時から大きく変わっていない。その当時は2005年ビジョンとして公開されたが、2005年など、とうの昔に過ぎ去ってしまった。本書で語られているのは2025年ビジョン。今から13年後の世界だ。これだけ多数の書籍を出版し、マレーシアやシンガポールなどの国家アドバイザーを勤めた大前氏の意見が日本の政治に反映されていない事は驚きだ。今回の衆議院選のマニフェストを一通り見みたが、どれも表面的なものばかり。脱原発は選挙の道具にされているように思える。

第1章 迷走する日本
第2章 混迷の原因はどこにあるか―官僚、政治家、国民それぞれの罪
第3章 このままいけば日本は衰退する―国家債務危機の真相
第4章 三つの訣別―陳腐化し、硬直化した「ニッポン」から抜け出すために
第5章 まず、小さな勝利を積み重ねる
第6章 そして、ゼロベースの大改革を断行せよ―日本の二〇二五年ビジョン

大前氏が提案するのは、道州制の導入し世界のホームレスマネーを日本に呼び込みこと。そのために、大阪と京都が合併し「本京都」とする案などがある。GDPでは関西は都市の中で世界で4番目の規模になるそうだ。税金のタックスヘイブン化。イギリスを例にする「グレートソサエティ」。国家を維持するための移民も積極的に受け入れろとも指摘する。そのために「グリーンカード制度」を導入し、日本の文化や歴史を身につけた外国人にのみ発行する。「参議院」を廃止し、上院を国民投票による「国民院」にする事を提案している。成人の年齢を18歳に引き下げ、高校を義務教育とする。

この本を貫くテーマは「訣別」だうろ。一部を変えるのではなく、「ゼロベース」で元から新しいものを構築する必要があるとも言う。ちょこちょこ変更するのではなく、全てをゼロから構築する。これからの時代は答えの無い世界です。日本のように答えのある問題ならネットで検索すれば誰もが答えに行き着く。大前氏は次世代を担う人材が必要とするスキルを、「英語」「IT」「ファイナンス」そして、「リーダーシップ」だと言う。この指摘は前面から賛同できる。これからの時代は、国家ではなく、強い都市が生活を担う時代だとも思う。国家ではなく、都市、「県」「市」「町」が生活を見る。

日本は民主主義の社会です。今回の衆議院選、国民1人1人の投票行動が日本国家の未来を担うと思う。相変わらず刺激的で、読みやすい。おもしろいかった。
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